2012年2月18日土曜日

論文採択。














メタ分析&レビュー論文が採択された。

Nakao, T., Ohira, H., & Northoff, G., (2012). Distinction between externally vs. internally guided decision-making: Operational differences, meta-analytical comparisons and their theoretical implications. Frontiers in Neuroscience. 6.

内容としましては、環境によって決められた予測しづらい一つの正答がある場合の意思決定(externally guided decision making)と、環境により決められた一つの正答がない場合の意思決定(internally guided decision making)、に関わる脳部位の比較を先行研究のメタ分析で行ったというものです。

結果としては、関与する脳部位が結構違うよ、というものになります(Externally guided decision makingはtask positive network、Internally guided decisoin makingはtask negative network/default mode network)。Default mode networkは外的な刺激を与えられて課題を実施していない休息時に活動が増加する部位で、脳の内因性の活動を反映しているとされています。そのことから、Internally guided decision makingは、よりそのような脳の内因性の活動に基づいた判断がなされていると考えられます。

またExternally guided decision makingでは、これまで強化学習モデルに代表される、フィードバックに基づく行動調整によるエラーの回避を目的とするモデルにより説明がなされてきました。しかしInternally guided deciion makingでは、環境により決められた答えがないため、そのようなモデルでは説明できません。そこで、いくつかの先行研究に基づき、フィードバックに基づくエラーの回避ではなく、競合(迷い)の低減を目的とするプロセスによる説明が可能なのではないかということを提案しました。

意思決定の研究といえば 正答のある事態についての研究というくらい、Externally guided decision makingについては多くの検討がなされてきましたが、Internally guided decision makingについてはさほど注目されてきませんでした。その背景には、予測しづらい一つの正答がある事態の極端なもの(正答がわからない事態)が、正答のない事態に対応するという前提が、あったのかもしれません。しかし、分からんなりに存在するはずの一つの正答に辿り着こうとする過程と、正答がそもそも無いから自分で決めよう、というのではだいぶ脳内の処理過程も違うし、人はその両方をやっている、ということだと思います。今後は、Internally guided decision makingのプロセスやInternally guided decision makingとExternally guided decision makingのそれぞれに関わる過程の関連性、などについての検討が進み、我々が日常的に行なっている意思決定過程についてより包括的な検討がなされる様になればいいなぁと思っております。

ちなみに、私の元々の関心は自己認知ですが、我々に自分を認識する能力、自己を内省する能力は、正答のない事態でどう行動するかを決定するときによく機能する能力のひとつなので、残ってきたものなのではないかという考えのもとに、このような意思決定の研究をしております。

脳波を用いた実験でも、この論文の結論を支持する結果を得てますので、その論文化もがんばります。