2019年7月16日火曜日

論文が採択されました。

久しぶりに自分が第一著者&責任著者の論文が採択となりました。

Nakao, T., Miyagi, M., Hiramoto, R., Wolff, A., Gomez-Pilar, J., Miyatani, M., & Northoff, G. (In press). From Neuronal to Psychological noise - Long-range temporal correlations in EEG intrinsic activity reduce noise in internally-guided decision making. Neuroimage. https://doi.org/10.1016/j.neuroimage.2019.116015




 
 この論文では、何もしていないときに記録される自発脳波の時間的一貫性と、自分の価値基準の時間的一貫性とに関連があることを報告しています。より具体的には「覚醒安静時に頭皮上から記録される自発脳波のアルファ帯域における時間的一貫性(図の上側;Long-range temporal correlation, LRTC)が高い人ほど、自分の内的な基準により選択する意思決定(例:自分が就きたい職業の選択)における一貫性も高い上の図の下側;価値基準が明確、価値基準に含まれるノイズが少ない)」という結果を報告しています。
 また、この自発脳波のLRTCや内的基準による意思決定の一貫性が高い人ほど、意思決定直後に観察される事象関連電位(conflict-related negativity; CRN)の振幅に、競合(迷い)の程度が明確に反映されることも明らかとなりました。
 これらの関係は外的環境における基準により選択する意思決定(例:平均給与の高い職業の選択)では認められませんでした。

 このことからいくつかのことが示唆されます。
  • 内的基準による意思決定と外的基準による意思決定とでは、内因性の自発的脳活動との関係が異なること。
  • 好みといった内的基準の一貫性は自発的脳活動のアルファ帯域における一貫性が基盤になっている可能性があること
  • そのため、自発脳波(特に何もしていないときに記録される脳波)を測定すれば、その個人の内的基準の明確さを推定できる可能性があること。
 神経活動の非線形なダイナミクスと、いわゆるアイデンティティにも絡みそうな自己の一貫性との関連について、その一端を垣間見ることはできたかなぁと思います。